楽理科卒業論文発表会のお知らせ(2015年3月22日)

第60回(2014年度)楽理科卒業論文・修士論文・博士論文発表会

日時:2015年3月23日(月) 13:00〜16:30
場所:東京藝術大学 音楽学部(上野キャンパス)5号館1F 5-109教室

■卒業論文(13:00〜13:20)
山本明尚   ニコラーイ・ロースラヴェツの「総合和音」――革新と伝統――

先日提出した卒業論文について発表させていただきます。当日会場では論文要旨の冊子が配布されるそうです。どうぞよろしくお願いいたします。

ニコラーイ・アンドレエーヴィチ・ロースラヴェツ [1]ロスラヴェツ、ロスラヴェッツとも言われますが、私は論文などではロシア語のアクセントを長音にした「ロースラヴェツ」で統一しています。 Nikolay Andreevich Roslavets / Николай Андреевич Рославец (1880/81 – 1944)は、1910年代から20年代にロシアで活動した作曲家で、「ロシア・アヴァンギャルド」と呼ばれる前衛芸術運動において、音楽の分野で指導的な立場に立ち、初期ソ連の公的な権力も持っていた人物です。しかし、次第にプロレタリアートのための平易な音楽を創作することを目的とした、敵対する諸派によって、ロースラヴェツとその周辺の前衛音楽家たちは音楽界から姿を消していきました。音楽界への再登場は、およそ半世紀後、デトレフ・ゴヨヴィ Detlef Gojowy の一連の研究や、おそらくそれに刺激されて行われた諸々の演奏会を待たなければなりませんでした。今日では、研究や演奏・録音によって少しずつ普及が進み、「ロシア・アヴァンギャルド」音楽のリーダー格の一人として、ある程度の地位が確立されているように思われます。

ロースラヴェツが自分の作曲にあたって重要視したと考えられるのは、彼自身「新しい音組織のシステム」という言葉で説明している、一連の革新的な作曲技法です。彼曰く、その「システム」は1919年ごろに完成したものだそうですが論文の表題に掲げた「総合和音 синтетаккорд」は、「システム」の初期形態のころから存在したと考えられます。本論文では「総合和音」についての先行研究を、その分析方法とそこから導き出された結論から批判し、ロースラヴェツと「総合和音」に新たな歴史的位置づけを付与しようと試みました。具体的には、ロースラヴェツが彼自ら先行者として認めていると判断できた二人の大作曲家、スクリャービンとシェーンベルクとの比較検討に絞って考えています。私が行った分析とその結果や考察、今後の展望・野望(?)、そのほか、詳しくは発表で。ぜひいらしてください。

References

References
1 ロスラヴェツ、ロスラヴェッツとも言われますが、私は論文などではロシア語のアクセントを長音にした「ロースラヴェツ」で統一しています。